Jun.m(C)
Nao.s
1. Abstract
本稿では、ロボカップジュニアサッカーライトウェイトリーグセカンダリに参加しているチームIDBの技術情報や、チーム結成までの経緯、戦略について説明します。また、技術情報についてはFWマシンとGKマシンのハード技術やソフト技術について詳しく説明します。
2. Introduction
私たちは、東京にあるロボット教室Truth Academyに通っています。ロボカップジュニアサッカーチャレンジには2013年から参加しており、元々はお互い別々のチームに所属していました。しかし、2016年に相方の受験などの理由でお互いのチームは解散しました。そこで、私たちは一緒にチームを組むことになり「IDB」が結成されました。現在、私たちは前のチームで経験してきたことを生かし、時には情報交換などをしながらマシンの製作に励んでいます。
私たちはこれまでに2度ロボカップジュニアジャパンオープンに出場し、2016年に総合4位、2017年に総合6位(プラセカ混合)でした。
3. Robot
3-1 Hardware Architecture ( FW machine )
特徴
FWはロボカップジュニアのサッカーという競技において素早くなおかつパワフルな動きを求められるポディションである。そのため、このマシンは低重心な構造にして機体の安定度を向上させた。また、モーターもトルクの高いものを使っているためシャーシの素材には強固なGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)を使用している。上段の板の素材には耐衝撃性のあるPC(ポリカーボネート)を使用している。
これらの板を使いモーターをしっかりと固定してスピーディーかつパワフルな動きを実現し、相手のマシンや壁との衝突に強い頑丈なマシンを製作した。
ジャイロセンサー ( MPU6050 )
マシンが向いている方向を検出するセンサーである。マシンの姿勢制御に利用している。磁気センサーとは違い角速度から角度を求めるためフィールドの磁場の影響を受けないというメリットを持っている。しかし、角度を求めるための計算の量が多く複雑なため、メインマイコンのほかに角度を計算するためのサブマイコンを搭載している.
赤外線センサー (TSSP58038)
パルスボールを見つけるためのセンサーである。この素子を全部で8個使い8方向を見るようにしている。また、この素子は高感度なので通常のBフィールドならどんなに離れた位置にあってもボールを見つけることができる。しかし、その高感度ゆえに真後ろにあるボールも見つけてしまう。そこで、アクリルパイプと銅テープを使って後ろにあるボールを見つけないように遮光した。
ラインセンサー (光変調型フォト IC S4282-51 )
白線を検出するセンサーである。この素子は、外乱光の影響を受けないというメリットを持っており高性能である。また、デジタル出力なので簡単に制御できます。LEDの明るさを調整すれば様々なフィールドに対応できます。この素子を全部で12個搭載しており、前後左右にそれぞれ3つずつ使用しています。
超音波センサー (MB1010 LV-Max Sonar-EZ1)
ロボットとフィールドとの距離を測るセンサーである。小さくて軽く制御も簡単です。後ろに1つ搭載して、ボールがフィールドから無くなった時に素早く自陣のゴール付近に戻るようにした。
マイコン (main; Meduino Mega 2560 Pro mini , sub; Arduino micro)
2016年のFWマシンのメインマイコンはArduino Mega 2560でしたが、メインボードのサイズ縮小と軽量化のため、2017年から互換性のあるMeduino Mega 2560 Pro miniに変更した。これにより、メインボードが縮小しマシンをコンパクトに製作できた。また、ジャイロセンサーの角度を計算するためのマイコンはArduino microを使用している。
バッテリー (Lipo battery 11.1V 1300mA G5 series)
Hyperion製のリポバッテリーを使っている。モーターの駆動用電源とメインマイコンやセンサーの電源はこのバッテリー1つで賄っている。
3-2 Hardware Architecture (GK machine )
特徴
このマシンはFWマシンとは違い、スピーディーかつパワフルな動きはしないが、ボールを正確に捕捉し状況に応じてボールを追いかける、自陣のゴール正面に素早く正確に戻るなどといった動きをして正確にFWをサポートする。
マシンの構造はFWと同じく低重心で、板の素材はすべて強度があり軽量でなおかつ加工しやすいアクリルを使用している。
コンパスセンサー (HMC6352)
マシンが向いている方向を検出するセンサーである。マシンの姿勢制御に利用している。ジャイロセンサーとは違いフィールドの磁気の影響を受けてしまうがその対策として、磁気シールドを使用している。
赤外線センサー (GP1UX511QS)
パルスボールを見つけるためのセンサーである。センサーの配置はFWマシンと同じく8方位を見えるようにしている。この素子はFWマシンの物と同じくらいの高感度なので遠くのボールに反応するが、真後ろにあるボールにも反応してしまう。ですので、後方のボールに反応しないようにカバーをつけて遮光した。
ラインセンサー (ダイセン ホワイトラインセンサー)
白線を検出するセンサーである。このセンサーはダイセン電子工業から販売されているものです。このセンサーを4つ搭載して前後左右に配置しています。また、反応速度を上げるために、白線処理にサブマイコンを使用している。
超音波センサー (PING)
ロボットとフィールドとの距離を測るセンサーである。このマシンには全部で3つ搭載され、後ろと左右に配置している。これらを使ってボールを見失ったときに自陣のゴールの正面に戻れるようにしている。
マイコン (main; Arduino Mega 2560 Pro mini , sub; Arduino mini)
メインマイコンにはプログラムの拡張性の高いArduino Mega 2560を使用している。また、白線処理をするサブマイコンはArduino mini の互換機を使用している。
バッテリー (Life battery 6.6V 1600mA Receiver Pack G3 series)
Hyperion製のリフェバッテリーを使用している。モーター駆動の電源とメインマイコンやセンサーの電源はこのバッテリー1つで賄っている。
3-3 Hardware Architecture (共通)
モーターとドライバー (motor; Joinmax , motor driver; VNH2SP30)
FWマシンとGKマシンには、高トルクのJoinmax製のモーターを使用しています。そして、モータードライバーには最大で14A流すことのできるPololu製のVNH2SP30を使用している。
リチウム系バッテリーの保護
私たちはマシンの動力源にリチウム系バッテリーを使用しています。ですので、回路ショートなどが原因で二次災害が起こらないようにヒューズを搭載している。また、低電圧でバッテリーの寿命を縮めないよう常にバッテリーの電圧を監視する低電圧アラームを搭載している。このアラームは設定した電圧を下回ると大音量でブザーが鳴る。
3-4 Software Architecture ( FW machine )
ボール追尾
ボールを追う動きは近くにあるときと遠くにあるときとで場合分けし、近くにあるとき
正面以外にボールがあれば回り込みをする。また、ボールの位置探査の時にはセンサーの値の最大値探索をしている。センサーの値の最大値探索とは、8つの素子がそれぞれ返す値を比較して一番大きな値を見つけることである。それによってその大きな値を返す素子の方向にボールがあるということがわかる。
超音波センサーの制御
ボールがフィールドから無くなった時に自陣のゴール付近まで戻る。また、ダブルディフェンス防止のため、ペナルティーエリアより外側に止まる。
3-5 Software Architecture (GK machine)
ボール追尾
ボールの位置探査方法はFWマシンと同じくセンサーの値の最大値探索である。しかし、GKマシンは、たとえ遠くのボールが見えていたとしても追わず、ボールが近づいてきたらボールを追う。
超音波センサーの制御
FWマシンがボールを保持しているときやボールがフィールドから無くなったときは3つの超音波センサーを使い自陣ゴールの正面に素早く戻る。また、自陣ゴール前で待機しているときにもし、左右どちらかに別のマシンなどが割り込んでもあらかじめ記憶しておいたデータをもとに壁との距離なのかそうでないのかを区別してボールを追尾すること以外ではゴール前を離れない。
3-6 Software Architecture (共通)
ライン制御
サッカーチャレンジのルールにアウトオブバウンズが導入されて間もないころは白線を踏んで戻るときの秒数をカウントにdelayを使っていた。しかし、そのカウント中は他の動きができないため白線の角に差し掛かると高確率でアウトオブバウンズをしてしまった。そこでmillisとwhileを使って秒数をカウントし、カウント中に別の白線を踏んでもそれに対応できるようにした。さらに、カウントが終わっても白線の外にボールがあれば、ボールが移動されるまで停止しアウトオブバウンズする確率を減らした。
移動しながらの姿勢制御
ロボットがボールを追っているとどうしても正面の向きがずれてしまう。ですので、コンパスセンサージャイロセンサーを使ってロボットの向きを修正している。今までのプログラムだと方位修正がボール追跡よりも優先していた。しかし、それだとボールを追っているときに向きがずれると隙ができてしまう。そこで、ボールを追いかけている際に向きがずれたら追いかけながら方位修正するようにし、スムーズにボールを追うことができるようにした。
4. Strategy
4-1 ロボットの役割
私たちはロボットの役割をFWとGKとでポディションを分けています。FWはスピーディーかつパワフルに相手陣地に攻め込み、GKは常に自陣ゴールの正面で迫ってくる相手の攻撃を防ぐ。また、必要に応じて前衛に出ることもある。
4-2 チーム内でのロボット開発
ロボットはチームメイトが1台ずつ製作しているが、月に3〜4回Truth Academyに集まったり、SNSのメッセージなどを利用したりして情報交換をしている。また、大会が近くなるとお互いのマシンで試合をしてお互いにマシンの改善点を指摘し合っている。
5. Acknowledgements
私たちはTruth Academyの講師の皆様やメンター、そして私たちをTruth Academyに通わせ続けてくれた家族の皆様の温かい支援により結成してからずっと充実したロボット開発を続けることができました。この場を借りて御礼申し上げます。
6. References
・Truth Academy’s homepage (ロボット開発全般) http://truth-academy.co.jp/
・はやねさん工房 (ジャイロセンサー開発) http://blog.livedoor.jp/hymne333/
IDB PV